2017年の暮れから2018年の8/31まで、「拡張少女系トライナリー」というスマホゲームを毎日プレイしていました。8/31までというのも、その日の15:00にサービス終了したためです。
ガストゲーをプレイした方なら分かるかと思いますが、トライナリーにも歌が鍵となるシーンがあります。今回はその歌の中から”Earthtasia”という曲を選び、「Earthtasiaの主題による狂詩曲」としてアレンジしました。
自分がトライナリーに触れていた時間は半年とちょっとで、メインストーリーが一区切り付いていた段階での開始でした。それでもその半年間は、このアレンジを作るための原動力としては十分過ぎるものでした。
その半年間の思い出を何とか形にしようとした今回のアレンジで、色んな所に音の仕掛けを散りばめています。 けれども大枠はまだしも3年、5年と経過してもなお細かな箇所を憶えているとは正直思えません。そのため、 備忘録兼解説の意味合いが強いのですが、どういう箇所に仕掛けを入れて、どういう想定でアレンジしたのかを書き残します。よろしければご覧下さい。(向こう側にも伝わっていれば良いのですが:(
曲全体は三部構成です。
I : 導入(Earthtasia変奏)
II : キャラソン・劇中BGMメドレー
III : Earthtasia変奏
となっています。
IIを除けば、ほぼ全てがEarthtasiaのメロディで構成されています。特にIIIはメインストーリーに沿わせた展開をするため、そんな感じだった〜と思っていただければ幸いです。
構成
Earthtasiaは大きくA,B,Cと3つに構成を分けることができます。
Aはイントロや、「星は生まれ変わり―」の箇所です。
Bは「mother 遠い昔から―」の箇所です。
Cは「Earthtasia 大地揺るがす歌―」の箇所です。
今回はこれらの分けたパートを個々に抜き出したり、組み合わせたりして組み直しています。例えば、原曲ではABABCBCBの順番で曲が構成されていますが、このアレンジではAA(A&B)AAABA…みたいなことをやっています。
聴かれた方は何となく分かるかもしれませんが、これら3パートの中で使用した最も頻度が高いのはA、次点でBです。Cは2回しか使っていません。
Aが一番多い理由としては、モチーフとしてみるとAが一番変奏させやすかったことが一つ。また、バトルクリア時BGMやイベントシーンBGMにもアレンジされていることも理由の一つにあります。これらのアレンジにはBもCも含まれていますが、曲の冒頭に置かれるAのメロディはbotさんにとって馴染み深いものではないでしょうか。(プレゼント周回とか特に)
またCを全く使用していない理由とも被ります。サビであるCはこのアレンジの着地点と捉えています。なのでCの引用は意図して徹底的に避け、ここぞというタイミングで持ってくるようにしています。そのため、前述の理由も合わせてAは引用回数が多くなっています。
なお、この組み換えでデイトラ(2017/12/18)で言及されていたEarthtasia原曲の意味が消えたかもしれませんが、別解釈と捉えていただけれと思います。
A
Aは元の主題(30小節)を34小節以降のように捉えています。
リズムを崩し、「オクターブ上への跳躍からの順次下降」という音形に着目しています。この音形をもっとざっくばらんに言えば「離れた上の音に飛んでから順番に下がる」といったものです。この音形をそのまま使ったり反転させて使ったりと様々な形で使用していますが、例としてIII-v(動画リンク)から抜粋して紹介します。ここのメロディはこのようになっています。
跳躍(緑)からの順次下降(青)が有る事が分かります。下降せず上昇している個所もありますが、これは先ほどの「反転させて使う」の例です。
この変奏が基本の形になっていますが、ある箇所では跳躍をオクターブ以外にしていたり、またある箇所では順次進行させてから跳躍をしたりと、様々な変奏を行なっています。
Bは冒頭二小節を使用する事が多いです。III-iv(動画リンク)でのピアノやヴァイオリンが細かく演奏しているのは、これの変形に当たります。
次の二小節は前述のものほど使用していませんが、III-i(楽譜抜粋箇所)で紛れ込ませていたりします。
I
Iにはintroductionも含まれます。introductionは厳密にはピアノソロと弦楽アンサンブルの2パートに分かれますが、動画では1つにまとめて表記しています。
細かく言うとピアノソロは提示部として扱い、弦楽アンサンブルをintroductionと捉えます。
Iの最後はBのモチーフを引用しています。Cに進むと思わせといてIIへの繋ぎです。
余談ですが、Bのモチーフのキーを変えると吐心感情戦イントロのストリングスリフと一致しますが、気がついた時はちょっとゾクっとしました。(流石に偶然と思いますが)
II
キャラソン・劇中BGMメドレーです。
キャラソンは アーヤ → ガブ → みやび → 神楽 → つばめ の順番です。
キャラソンアルバムの曲順に沿わせてると思わせておいて、みやびと神楽の順番を入れ替えています。
作っている最中は、更につばめも入れ替えて神楽を一番最後に持っていくか悩みましたが、結局つばめは最後にしました。
並びを活躍した順とすると、IIはリプレイス前を表していると思えなくもない構成です。
IIについては原曲の雰囲気に忠実にするように心がけたので、がっつりコメントを残せそうなアレンジだけ……。
BOOLEAN_PARADOX/.
どの曲も、こうアレンジしようと考えると大体はすんなりアレンジできましたが、この曲は原曲がEDMでしたので始めは音ゲーアレンジのノリで壮大にしてみました。弦3オクターブ+スネアで骨組みを組んでみましたが、メロディの旋法も相まって思わず「国歌……」と漏らすほど国歌っぽくなるなど(デイトラの曲解説を鑑みるとだいぶ意味深)。
思ってたのと違う!って事で、結局金木管の重厚な和音とか組まずにピアノ主体でシンプルにしました。こっちの方が感情ど直球な感じがして好きです。
また、コーラス部分を抜かしています。コーラスの歌詞を復号すると分かりますが、みやび本人の歌じゃないと意味がないと判断したためです。
劇中BGM
各キャラソンの間に一曲ずつ挟んで、合計4曲を抜粋しました。最初の3曲はナビでよく使用されていた曲を選んでいます。
2曲目はクランメニューBGMの印象が大分強いと思われますが、ナビでよく使われる曲を探してみたら意外と使われていたため選びました。(今(2018/11)となっては確認する術も無いですが、メインストーリー前半のナビゲーション内で、記録映像を見終わった後によく使われていました。)
残りの1曲はメインストーリーの終盤で使われていて印象的だったので、最初から入れたいと決めていた曲です。神楽の前からつばめまでの繋ぎは、特に曲名の流れがピッタリ当てはまったと思っています。曲名は書かないので、ぜひサントラ買って下さい。(ダイマ)
III
メインストーリーの流れを汲み、変奏します。
IIIは小番号がi 〜 xiまでありますが、それぞれにメインストーリーのこの辺り、といった想定がなされています。
かなり5chの内容が色濃く現れており、至る所で神楽の心情を鏡写しにしようとしています。(とかいうと怒られそう)
i 〜 iii
5chの導入です。
いきなりAの反転から始めているのにも意味があります。満を持しての5ch、そして初ストーリーの神楽の様子は中々強烈なものでした。(自分が始めたタイミングが5ch準備中だったので特に)
iv – v
同化の辺りです。IIIは全体的に曲調が暗いですがこの2つは明るめにしました。
ivのヴィオラが演奏している繰り返し手前の音型は、イシュフォビアのラストのコーラスから引用をしています。(音合ってるか自信ないですが……) これはドームの出来事のフラッシュバックを表したものです。
vの終わりではピアノ+チェロメインで演奏する箇所がありますが、そこに時よりチェレスタが5音のモチーフを演奏します。これは各キャラソンのメロディの頭1音を(この狂詩曲での並びに)並べて2EF4Fのモチーフとしたものです。
フォビア、2EF4Fは掘り下げきれなかったのが心残り……
vi – vii
神楽の発症前辺りです。「揺らぐ気持ち」をテーマに変奏させました。
viiで始めてCを引用しますが、弦から音型を引き継ぐピアノは不完全な引用をします。
viii – ix
神楽発症もありますが、この辺りはの想定はアーケロン爆発事件(== なりすまし)やライフギャザー取得などなどてんこ盛りです。
viiiは「彼ら」を主テーマとして置いており、ixはライフギャザー取得付近を主に置いています。
本当はこの後のxで「総意」をテーマにした変奏を組みたかったのですが、今回それは叶わず……。
x
Cの完全な引用をします。
xの最後は原曲通りBを元にして、ピアノがオルゴールのようにrit.していき、静かに終わります。
ここでのBは”Loved-One” styleに基づくものです。
xi
弦楽のcrec.から、ピアノがBの引用と変奏を行います。
最後にAを奏でた後、ピアノが和音を奏で、弦楽がその和音に応答するようなcrec.を奏でて終了です。
この終わらせ方は再接続への願いと聴こえるかも知れません。
しかし、この最後の和音はソラノキヲクへ進むことができる和音として置いたつもりです。
これによりxiは、xの解釈次第でA-F世界確定後(xを世界確定と解釈し、xiがアフターストーリー。ソラノキヲクへパスを渡す)ともA-F世界確定前(xiはソラノキヲクへ繋がなかった)とも取ることができます。
なお、5chにおいてはF世界を選択しました。しかし、この曲ではF世界を前提にして書いたわけではありません。これは主にTwitterでの議論を見たことが要因です。
Twitterでの議論を見始めたのは5chの半ばからでした。自分の選択と集計結果との若干のズレがあったことがきっかけです。
ここで初めて、ズレどころの話に収まらない圧倒的な量の意見に触れました。中には当然、反射的に全く受け入れられない意見もありました。
この事がかなり衝撃的で、相容れない意見になぜそう思ったのか?の解釈は諦めてしまいましたが、そういう意見もあるという認識が出来たことが大きかったです。
そのためこの曲のエンディングは特定の世界に寄せず、どの世界を選んだ人にも腑に落ちる解釈が可能な終わらせ方にしようと決めていました。普通に聴いてしまうと自分が選択したF世界へ引っ張られてしまうと思います。
けれども、この記事が、この曲が何らかの手解きになれば幸いです。